8年前、私を信じてくれた人
あったかいごを立ち上げて8年たったが、
先日、たぶん私は一番涙を流した。
きっかけは、8年ぶりに再会した一人の銀行員だった。
その人は、8年前、まだ、あったかいごという会社もなく、私自身も何者でもなかった頃、
汚いデニムにTシャツ姿で、必死に作った事業計画書を抱え、ビッグスクーターにまたがって銀行巡りをしていた私のことを、唯一、馬鹿にせず真摯に対応してくれた。
今回、その人と再び会えることになった。
始まりは、現在お世話になっている銀行の支店長さんと担当者の方との食事会だった。
何気なく、創業時に最初の融資を決めてくださった当時の担当者への感謝を話していると、
「〇〇も、きっと梅野社長に会いたいと思いますよ。今度の食事会、誘いますか?」
と、嬉しい提案をいただいた。
「ぜひお願いします!!今のあったかいごの状況を知っていただきたいです!!」
私は、子どものように喜んだ。
そして食事会当日。
8年ぶりに、元担当者と再会した。
今のあったかいごを支えてくださっている方々と、あったかいごが生まれるきっかけを作ってくださった人。
その両方に囲まれて飲む酒は、いつも以上に美味しかった。
酒が進むにつれ、話は当然、創業当時へ戻っていった。
あったかいごを立ち上げる前、
今考えると、当時、見た目からして若干清潔感の欠ける私が、 融資のために銀行を巡る姿は、決して信用の足る其れとは言えなかった。
そして実際、多くの銀行では、ろくに話も聞いてもらえなかった。
銀行にいっても、事業計画を出す前に終わり、
夢を語る前に銀行を追い出され、
鼻で笑われたことも多々あった。
勿論、当時自信満々に銀行回りをしていたわけではない。 苦労するのは目に見えていた。
でも、わかっていても、断られるたびに、鼻で笑い飛ばされるたびに
「やっぱり無理なのかもしれない」
という気持ちが少しずつ大きくなっていった。
そんな中で飛び込んだ銀行で、たった一人、
私の話を馬鹿にするでもなく、途中で遮るでもなく、
真剣に聞いてくれた人がいた。
それが、今回8年ぶりに再会した当時の担当者だった。
私は決して、言葉巧みに話せるタイプではなく、
ただ、自分なりに、
「こんな会社をつくりたい」
という思いをひたすら語り倒した。
彼はその間、何度もうなずきながら聞いてくれた。 あらゆる銀行で相手にされず、心が折れかけていた当時の私には、
彼の背中に後光が差して見えた。
たぶん本当に、神様くらいに見えていたと思う。
今回、8年ぶりに再会した彼に、私はこんなことを聞いてみた。
「よく当時の私の話をまともに聞いてくれましたよね。冷静に振り返ってみると、私でもまともに相手しなかったかもしれません(^^;;」
すると彼は、
「いえいえ。だって、本当に良い事業計画でしたし、梅野さんの情熱がすごく伝わってきましたから。」
と、当時と変わらない穏やかな口調で答えてくれた。
8年前の私は、ただ必死だった。
自分が周りからどう見えていたのかなんて、考える余裕もなかった。
ただ、少なくとも彼には、
事業計画の向こう側にあった私の思が、ちゃんと届いていたのだ。
そして当時、彼は私に言ってくれた。
「梅野さん、頑張りましょう!!融資が取り付けられるように、梅野さんの夢が叶うように、僕も全力でお手伝いします!!」
その言葉で、私はもう一度、前を向くことができた。
もちろん、融資をしてもらえたことは大きい。
だが、それ以上に、
誰にも相手にされなかった時に、
「あなたの話を聞く価値がある」
と、一人だけ態度で示してくれたこと、
それが、あの頃の私には大きな支えとなった。
今のあったかいごは、あの時の彼がいなければ存在していなかったかもしれない。
少なくとも、前へ進む気力が途切れかけていた私の情熱に、
もう一度火をつけてくれた人であることは間違いない。
そして、あれから8年。
あの日、事業計画書の中にしか存在しなかった「あったかいご」に、
今は多くの職員が働き、多くのご利用者に利用していただいている。
彼がくれたチャンスの先にできた今のあったかいごと、
少しくらいは成長したであろう自分自身を、
ようやく彼に見てもらうことができた。
そんなことを話しているうちに、
気がつけば涙が止まらなくなっていた。
創業当時、私にチャンスをくれた元担当者、
今のあったかいごを支えてくださっている銀行の皆さん、
これまで、あったかいごで働いてくれた職員、
今、一緒に働いてくれている職員と、その家族、
そして、これまで仕事を通して関わってくださった多くの方々。
一人ひとりの顔を思い浮かべていると、
私一人でできたことなど、本当に何一つなかった。
自分では、
自分が頑張って会社をつくってきたような顔をしている。
だが振り返れば、
節目節目で誰かに手を差し伸べてもらい、
誰かに背中を押してもらい、
誰かに支えられなが
ら、ここまで来ただけなのだと思う。
私には、まだまだやりたいことがある。
まだ夢半ばである。
きっとこの先も、
私一人では何もできない。
また誰かに助けてもらい、
誰かに背中を押してもらい、
時には誰かの力を借りながら、
少しずつ前へ進んでいくのだろう。
8年前。
何者でもなかった私の話を、
たった一人、真剣に聞いてくれた銀行員がいた。
あの日にもらったチャンスが、
8年経った今、
多くの人が関わる会社になった。
それを本人に見てもらえたことが、
たまらなく嬉しかった。
そして、8年前に信じてくれた人に、
「あの時、信じてくれてありがとうございました」
と、ようやく少しだけ返せたような気がして、涙が止められなかった。





コメント