top of page
  • alt.text.label.Instagram

まだアラバスタ。――5施設目、須恵という航路

  • Ume
  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

更新日:23 時間前


明日、9月1日。

いよいよ、有料老人ホーム「あったかいご須恵」が新規開設となる。

起業して8年目。須恵で、あったかいごの有料老人ホームは5施設目となった。

5施設。

こうやって数字だけ書くと、なんとなく順調そうに見える。

最近ではありがたいことに、

「勢いありますね」

「また新しい施設ですか」

などと言っていただくことも増えた。

しかし、当然ながら最初からこんな感じだったわけではない。

むしろ最初の頃は、

「この人、本当に大丈夫かな」

という目で見られていた時間の方が、圧倒的に長かったような気がする。

まあ、当時の私を振り返ると、その評価については完全な誤解とも言い切れない。

さて、創業施設である大野城を開設して間もない頃から、私は一つの目標を持っていた。

「15施設をつくる」

という目標である。

なぜ15なのか。

ここに壮大な経営理論でもあれば格好いいのだが、当時の私は単純に、

「そこまで行きたい」

と思っていた。

それはもう、ルフィが幼い頃から「海賊王になる」と決めていたのと同じくらい、かなり純度の高い野望だった。

ただし、問題が一つあった。

その頃のあったかいごには、まだ2施設程度しかなかったのである。

2施設しかない会社の社長が、

「15施設開設が目標です」

などと言い始める。

まさに、まだ仲間もろくに揃っていない頃のルフィが、

「俺は、海賊王になる!!」

と宣言しているようなものである。 ワンピースでは、最初こそ疑っていたゾロやナミ、ウソップも、 ルフィの、まっすぐな人柄や、その特殊能力と強さ、 何よりも、彼の決して折れない信念を見て すぐに彼に何かを見い出し、彼の夢についていくのだが…。

一方、当時の私はというと、

ルフィのような特殊能力も勿論なく、

目立つのは、せいぜい人より早く伸びる髭くらい。

役職経験もない。

介護職員とケアマネを少しかじった程度。

何か大きな実績があるわけでもない。

強力な後ろ盾があるわけでもない。

要するに、

ただの人だった。

「この人なら、きっと何かやってくれる……✨」

などと秘めたる力を感じ取り、黙ってついてきてくれる職員が続々現れるような、少年漫画的展開は当然起きなかった。

職員に「15施設開設」という夢を話せば、若干眉をひそめられ、

外部の方に話せば、

「夢があるのはいいことですね」

「応援しています」

と、優しく声をかけていただいた。

ただ、その「応援しています」という言葉の裏に、

「まあ、無謀な夢を語るのは自由だ」

という意味が見え隠れしていたのは、さすがの私でも分かっていた。

だから私自身も、

「15施設つくります!」

と、大きな声ではなかなか言えなかった。

職員の前ですら、

「……まあ、最終的には……15施設くらい……」

と、若干声量を落としていた。

夢を語っているというより、

何か後ろめたいことを告白している人の声量だった。

経営者なのに、自社の目標を小声で言っていたのである。

あれから、まだ3年ほどしか経っていない。

だが、この3年間で会社は随分変わった。

何より変わったと感じるのは、管理職たちである。

当時、新しい施設を出す話をすると、

「人は足りるんですか」

「また増やすんですか」

「今の施設も大変ですよ」

という反応も少なくなかった。

もちろん、それは間違った意見ではない。

現場を預かる人間として考えれば、むしろ至極まともな反応である。

当時は、私が前を向いて走ろうとすると、

後ろでは管理職たちが、

「……本当に行くんですか?」

という顔をしている。

そんな時期もあった。

船長だけが行き先を決めていて、乗組員はまだ若干下船を検討している。

そんな船だったのかもしれない。

ところが、今は違う。

「どうしたらもっと早く目標を達成できるのか」

「もっと効率よく、効果的に仕事をするにはどうすればいいのか」

「次の施設では、今回の経験をどう生かすのか」

そんな話を、管理職たちの方からするようになった。

いつの間にか、

「社長が勝手に言っている15施設」から、 「自分たちも一緒に目指す15施設」へ変わっていた。

これは、私にとって本当に大きな変化である。

私にもようやく、

進むべき航路を一緒に見てくれる、

ゾロやナミ、ウソップやサンジ、チョッパーのような、

心強い仲間ができたのである。

もっとも、

誰がゾロで、誰がナミなのか、サンジは誰なのか、を社内で決め始めると、間違いなく揉めるので、そこについては永久に未定としておきたい。

施設が一つ増えることも、もちろん嬉しい。

だが、会社として見れば、こちらの方がもっと大きな成長なのかもしれない。

経営者一人だけが夢を語っている会社は、意外と弱い。

社長が毎朝、

「行くぞー!」

と言って、

職員が、

「……お、おう」

となっている状態では、なかなか遠くまでは航海できない。

組織が本当に強くなっていくのは、社長が言わなくても、

「次はどうする?」

「もっと良くするには?」

という会話が、組織の中から自然に出てくるようになったときなのだと思う。

そして今回、あったかいご須恵に集まったメンバーとも、この1か月、一緒に仕事をしてきた。

率直に言って、

本当に頼もしい。

新しい施設というのは、建物が完成したら終わりではない。

むしろ、そこからが始まりである。

新しい場所に、

新しい職員が集まり、

新しいご利用者を迎え、

そこから一つの施設の文化をつくっていく。

開設前の1か月、須恵のメンバーと一緒に働きながら、

この人たちなら大丈夫だ。

そう思える場面が何度もあった。

そして、明日9月1日。

「あったかいご須恵」がスタートする。

5施設目。

目標の15施設までは、あと10施設。

こう書いてみると、

まだ3分の1である。

ワンピースでいえば、

「だいぶ冒険したな」と思っていたのに、まだアラバスタ。

クロコダイルと戦って達成感に浸っている場合ではない。

海は、まだ広い。

道のりは、果てしない。

昔の私なら、残り10施設という数字を見て、

また少し声を潜めていたかもしれない。

だが、今は普通に言える。

あったかいごは、15施設を目指している。

そして私は、本当に実現できると思っている。

別に急に私の胆力が増したわけではない。

筋肉については増えたが、胆力と筋力の因果関係については、今のところ確認されていない。

そうではなく、

一緒にその場所を目指してくれる人たちが増えたからである。

昔は、一人で見ていた景色だった。

今は、同じ方向を見てくれる仲間がいる。

それなら、夢ももう少し大きな声で語ってもいいじゃないか。

明日から始まる、あったかいご須恵。

5施設目は、ゴールではない。

15施設という目的地へ向かう、航路の途中である。

もちろん、数を増やせばいいわけではない。

まずは目の前のご利用者一人ひとりに向き合い、

ここで働く職員が力を発揮できる施設をつくる。

一施設、一施設、ちゃんと良い施設をつくる。

その積み重ねの先に、

6施設目があり、

7施設目があり、

そして、いつか15施設目がある。

昔は、職員の前ですら小声でしか言えなかった、

「15施設をつくる」

という夢。

その夢がいつか本当に現実になったとき、

私にとっての

「ひとつなぎの大秘宝」

を見つけたと言っていいのかもしれない。

まあ、

海賊王はルフィに任せる。


私は、まず、この仲間たちと15施設まで航海する。 明日、9月1日。

その航路の5つ目となる、

あったかいご須恵、出航です。

 
 
 

コメント


介護職員等特定処遇改善加算

にかかる情報公開

(見える化要件)

bottom of page